柄澤齊 蓄音機コンサート(2026) 演目

東京/博多での2回の蓄音機コンサートを開催しました。開催を記念して、本企画のプログラムを公開いたします。
全8曲の構成ですが、一部の楽曲は東京/博多で別レコードを演奏しています。いずれも、新作版画集「OPERA」と関連する楽曲や、構想段階にあった楽曲にちなんだ演目です。
またこの度は蓄音機の専門家である蓄音機の梅屋さまに、蓄音機やレコード、ご選曲の面で多大なるご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。


構成 : 柄澤 齊   協力 : 梅田英喜(蓄音機の梅屋

蓄音機 : (東京)HMV model 179 HMV model 102

(博多)HMV model 130 / HMV model 102

 

1.イギリス民謡「南の風」
“Blow the Wind Southerly” (Northumbrian folk song)

キャスリーン・フェリア(c-alt)
Katheleen Ferrier (contralto) 

(Decca F9300) (r.1949)

https://www.youtube.com/watch?v=dXQuaq_2icU

本曲はノーサンブリア地方に伝わる、海風に向かって恋人の帰還を祈る女性の心境を歌った民謡で、1910年にW.G.ウィテカーにより編曲・発表された。フェリアは42年のデビュー後、瞬く間に英国を代表する歌手となったが、本録音はそのキャリアの絶頂期に行われた。

 

2.ヴィヴァルディ:組曲イ長調
Vivaldi (arr. Busch) : Suite in A

アドルフ・ブッシュ(vn), ルドルフ・ゼルキン(pf)
Adolf Busch (vn), Rudolf Serkin (pf)
(HMV DB1524) (r.1931)

https://www.youtube.com/watch?v=rJ5EG6zhggc

バロック音楽の巨匠ヴィヴァルディの原曲を、バイオリニストのアドルフ・ブッシュ自身がバイオリンとピアノのために編曲したものが本作。ブッシュの奏法は、当時の主流であった厚みのあるポルタメントと自由なリズム伸縮が特徴であり、バロック音楽の現代的復興における重要な記録となっている。

 

3.ヘンデル:『セルセ』より「オンブラ・マイ・フ」
Handel : “Serse” – ‘Ombra mai fu’

ヘンデルが1738年にロンドンで初演したオペラ『セルセ』第1幕冒頭のアリアであり、ペルシャ王セルセが、一本のプラタナスの木が与えてくれる平穏な陰に感謝を捧げる歌として知られる。

(東京)キルステン・フラグスタート(sp) Kirsten Flagstad (sp) 

(HMV DB6791) (r.1948)

https://www.youtube.com/watch?v=VaVmJl8kEaE

「世紀のワーグナー歌手」と称されたフラグスタートが、初演時にはカストラートによって歌われていたこのアリアを、繊細なレガートで歌い上げている。

(博多)マリア・オルツェウスカ (c-alt) Maria Olszewska (c-alt)

(HMV D1490) (r. 1927)

https://www.youtube.com/watch?v=Gxs61K7rSPg&t=2224s

(リンク先 37.04~)

ドイツ出身のコントラルト(低音女声)歌手マリア・オルツェウスカは、ウィーン国立歌劇場をはじめとする国際的な舞台で活躍した。

 

4.グルック:『オルフェオとエウリディーチェ』より「われエウリディーチェを失えり」
Gluck : “Orfeo ed Euridice” – ‘Che farò senza Euridice’

ティト・スキーパ(t)
Tito Schipa (t)

 (HMV DB1723) (r.1931)

https://www.youtube.com/watch?v=E3dZBISzsLo

本曲はグルックによるオペラの歴史を転換させた「改革オペラ」の代表作であり、ウィーンでの初演時はカストラートによって歌われた。スキーパは「テノーレ・ディ・グラツィア(優雅なテノール)」の完成形と称された。言葉のニュアンスと完璧な呼吸法(フィアート)を重視し、本作では亡き妻を連れ戻すために冥界へ降りるオルフェオを表現している。

 

5.モーツァルト:『魔笛』より夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように胸に燃え」
Mozart : “Die Zauberflöte” – ‘Der Hölle Rache Kocht in Meinem Herzen’

1791年初演のジングシュピール『魔笛』第2幕で歌われるアリアで、三オクターブに及ぶ声域と、極めて高速なスタッカートのパッセージを要求される、コロラトゥーラ・ソプラノのための最難関曲の一つ

(東京)ミリザ・コルジャス(sp)

Miliza Korjus (sp) (HMV EH898)

https://www.youtube.com/watch?v=OMDB_MFUIbA

ハンガリー系エストニア人のコルジャスは、正確なスタッカートと3オクターブに及ぶ声域で「伝説的なコロラトゥーラ」と称された。特にこの「夜の女王」の録音は、その後の歌手たちの模範とされるほど技術的完成度が高い。

(博多)マリア・イヴォーギュン(sp) /Maria Ivogun (sp)

 (Polydor B24232)  (r.1925)

https://www.youtube.com/watch?v=GyRsYJ80XTs

イヴォーギュンはモーツァルトやR・シュトラウスのオペラで伝説的なコロラトゥーラ・ソプラノとして活躍したハンガリー出身の著名なオペラ歌手であり、本コンサートの『ナクソス島のアリアドネ』も彼女による歌唱です。

 

6 . ウェーバー:『魔弾の射手』よりアガーテの祈り

「静かに、静かに、敬虔な調べよ」

Weber : “Der Freischütz” – ‘Leise, leise, fromme Weise’

ロッテ・レーマン(sp) Lotte Lehmann (sp) 

(Parlophone PX1016) (r.1929)

https://www.youtube.com/watch?v=Xon_gjoay4U

ウェーバーによるドイツ・ロマン派オペラの記念碑的作品とされており、本曲は第2幕でヒロインのアガーテが、恋人マックスの無事を神に祈る場面である。

歌手ロッテ・レーマンはウィーン国立歌劇場のプリマドンナとして君臨し、マーラーやシュトラウスからも高く評価された。

 

7 .プッチーニ:『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」

Puccini : “Turandot” – ‘Nessun Dorma !’

ベニアミーノ・ジーリ(t) Beniamino Gigli (t) 

(HMV DB21138) (r.1949)

https://www.youtube.com/watch?v=7QSumyWzSaU

プッチーニの遺作となったオペラ(1926年初演)の第3幕で、謎の王子カラフが勝利を確信して歌う有名なアリアである。録音当時、ジーリは59歳という高齢であったが、依然として「黄金の音」と評される声の輝きと、驚異的な呼吸コントロールを維持していた。この録音は、彼がプッチーニの第一人者として君臨した晩年の貴重な記録となっている。

 

8.R.シュトラウス:『ナクソス島のアリアドネ』よりツェルビネッタのレチタティーヴォとアリア

R.Strauss : “Ariadne auf Naxos” – ‘Großmächtigste Prinzessin – So war es mit Pagliazzo’

マリア・イヴォーギュン(sp)

Maria Ivogun (sp) (HMV VB67) (r. 1932)

https://www.youtube.com/watch?v=_08he7-JGQw

1916年に決定版(第2版)が初演された本作は、悲劇と喜劇が舞台上で競演する独創的な構成を持つ。自由奔放な女道化ツェルビネッタが歌う「偉大なる王女様」は、あまりの難巧さから後に作曲者自身によって改訂が加えられたほどの難曲である。

イヴォーギュンは、作曲家シュトラウス本人の強い希望により、1916年の改訂版初演のツェルビネッタ役に抜擢された。本作は、初演版の過酷なまでの超絶技巧を、イヴォーギュンの歌唱能力に合わせてシュトラウスが改訂を加えたという歴史的経緯を持つ。



蓄音機にご興味を持たれた方は、ぜひ梅田様のご著書「今日からはじめる蓄音機生活」もご覧ください。
今日からはじめる蓄音機生活


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