一枚の写真を画面に貼付する。その撮影時期も場所も定かでないその写真の周囲をまるで引き伸ばすかのように描いていきます。写真と絵画の間には親和しつつも拮抗する多くの表現に関わる問題が潜んでいるのは言うまでもありません。ここでもかつて撮った写真と、今描いた絵画の中で、記憶も定まらず句読点も打てずにいる光景が立ち現れてきます。

どこかを訪ね、眺め、触ったとしても、もともと時空において定かな位置も持てぬ私たちが確かめうるのはこのような風景であるかもしれず、そのため作品は削げた抒情を潜めながら私たちを立ち止まらせます。

今回は写真2枚の作品を配し、その訪れた場所時間をさらに惑乱させ、記憶の奥底にあるどこかへと見るものを誘い出します。写真と絵画が相反しながらも手を携えて、記憶や表現について多くの問いを発してくる本展は作家の2度目の個展ですが、海外でも高い評価を得ておりその活躍が期待されています。

城田 圭介 略歴
展示作品(一部)

Another Day #1
写真、アクリル/キャンバス
112x194cm
2006

Another Day #2
写真、アクリル/キャンバス
130.3x194cm
2006
展覧会カタログ
15.7×25.6cm / 14ページ / 図版8点
伊藤俊治による評論「風景と記憶の召喚」
価格:800円(税込)
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