今回「大竹伸朗展 UK77」に出品した作品は、すべて1977年5月3日から翌78年4月28日までのイギリス、主にロンドン滞在中に制作したものである。 「絵」と「写真」、そして「何かと何かを貼る」ことが自分の中で密接に結びついていることを初めておぼろげながら実感しはじめたのはその一年間においてであった。 知人や友達の全くいない初めてのロンドン初日から街中を歩き、路上に捨てられた英語圏印刷物の包紙やチケット、新聞やチラシに心底興奮した。特にドラッグ・ストアやレコード屋前に一杯になったゴミ箱を発見する時は心が踊った。そこでは必ず宝が待っていた。こんなに美しいものがタダで落ちているならいくらでも作品を作れると思い、とりあえず安物のノートブックを購入しそれらを順番に貼り始めた。そしてその3年程前北海道での日常を撮り続けた以上に、ここロンドンでもできる限り過ぎ去る時間を写真に写し取り、そして絵を描こうと思った。それはロンドンに着いた日から無意識に始まっていった。おそらくそれらの行為のみが見知らぬ土地でかろうじて自分を保つ方法だったのだと思う。 美術用語辞典で「コラージュ」を引くと「貼付の意」とある。この「貼付」の意が加速度的に多様性を帯びて来ているのを感じる。もしそれが真実なら人が過去の記憶を呼び戻す行為も「コラージュ」だと言えるのかもしれない。自分にとって「写真」はどうもその部分に深く関わっているようなのだ。 あれから27年経過した今でも自分にとって「貼付の意」への「わからなさ」の力によって貼り込むことを繰り返しているのだと思う。 大竹伸朗 * * * 大竹伸朗展「UK77」を開催いたします。写真約80点を中心にコラージュ、ドローイング、さらにそれらを再構成した新作のシルクスクリーン作品を展示し、今なお強烈に放射し続ける大竹伸朗の制作の原風景をご覧いただきます。 |