untitled
2009
112 x 194 cm
アクリル / キャンバス

国本泰英は群像をもっぱら描いてきました。水泳の少年たちの作品が多いのは彼にとって、水泳が触れる機会の多かったスポーツでその折りの群れに馴染みが深かったという理由でしかありません。むしろ描いているうちに、スポーツに向かう人の姿に興味を覚えるようになり、それは美しいとか健康だといったことではなく、ただただスポーツが不思議な形を強いるということに興味は尽きたようなのです。凡そ日常から遠い形、場合によっては奇矯と言っていいほどのフォームは更に群れという形を伴うと、むしろ号令一下、揃っているかのように見えて、その各々は小さい差異を露呈する。そんな人の差異を表情からでなく彼はフォームの差異として描くことにしました。ことごとく人をシルエットにしたのは表情に仮託する必要がないからなのです。
描かれたシルエットの群れはそれにしても密かに自分を語るようで、群れても、なお私を語り、静かながらざわざわと、どこからか小さな声が湧いてくるかのように思えます。昨今ではスポーツに限らず、そのような人体の不思議を表現する対象の幅を広げています。思いおこせば子供のころ校庭で一斉に並べられて、個はかき消されるよう扱われながら、だからこそ私はここにいると小さい声で訴えた、あの声が国本の作品から聞こえてくるのだと気付かされます。
本展は国本泰英の当ギャラリーでの初個展であるとともに東京では初めてのまとめた発表とな
ります。
是非ともご高覧の上、ご喧伝いただきますようお願い申し上げます。

国本泰英の略歴
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