馬場俊光展

セピアの風景-2
2009年
油彩／アルミパネル
42x81cm

馬場が描く風景は匿名のものにも関わらず、私たちの中に深く静かに侵入してくるように思えます。人影なく、何の音も聞こえない。ことごとく喧騒と猥雑さを消し去るためにアルミのパネルに何度も油彩を施して平らかな静かさを保ち、不要な光、艶を画面から排除する。見えていながら眼に残らぬいくつかの景物を削除。固有の色彩にはこだわらずわずか数色を微かな諧調のずれを用いながら寡黙な風景を描きだしていきます。生きることは、何かに向かいあい、交感しあうことに他なりません。風景は常に私たちを包囲し追いかけ、記憶の背景を彩ってきました。馬場の描く風景は人に棘（とげ）を以て刺さず、殊更に問いかけもしない。馬場は現実の匿名の風景を参照しながら、むしろ自分の内なる記憶を探索しているかのようです。馬場の絵画が見る者の内部に侵入する、というのはこんなところからくるのかもしれません。　
　

本展は馬場の初個展となります。若くして既に老練の気配さえある作風を是非ご高覧下さり、広くご喧伝賜りますようご案内申し上げます。