荒井経の作品には、玩具や駄菓子、それに昆虫など、どこか懐かしさを感じさせる「小さな物たち」が描かれます。近作のシリーズでは、それらはあたかも空中に浮遊するかのように画面上に漂い、シルエットに当てられた弱い光はそれらの物たちが過ぎ去った記憶の中の存在であることを暗示します。空と雲を想起させる背景は、清々しさとともにどこか寂寥感をはらみ、過去の追想に常につきまとうかすかな不安・焦燥をも私たちに思い起こさせます。
岩絵具や和紙など「日本画」の材料・技法を用いながら、細密な筆致とモチーフ同士の新たな関係性の創出を通して「物の描写」という絵画の本質的なテーマのひとつに向き合った、荒井経の新作を展示します。
荒井 経 略歴
展示作品(一部)

light blue light-A レクイエム (右は部分)
112x162cm
顔料、膠/パネルに紙
2003

light blue light-D レクイエム
116.7×116.7cm
顔料、膠/パネルに紙
2003
展覧会カタログ
21x27cm / 10ページ / 図版8点
谷新による評論「荒井経―飛び翔けるものの背後に」
価格:600円(税込)
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