風景はいつも目の前に横たわっているにすぎません。
それに癒されたり、私自身を育んでさえくれるというのに、風景はいつまでももどかしく、私たちのものにはなってくれないのです。
むしろ眠りに落ちる前、暗やみで密かに繰り広げられる風景、歩きながら脈絡なく思い出す風景こそ、私だけが知りうる風景と言えるかもしれません。

阿部未奈子は風景の写真をコンピュータ上で加工し、それをキャンバスに写す――そこには本来放埒な風景を組成する色彩ともどかしくも把えられない揺らぎが明らかに展開されて、彼女自身が確かに見たリアルな風景をそこに呼び寄せるかのようです。
描くことが自分にとってのリアル感を確かめること、絵画の本質を改めて知らされる本展は、阿部未奈子の初めての個展となります。

阿部 未奈子 略歴
展示作品(一部)

scenery no.2
油彩、アクリル/キャンバス
73x91cm
2006

scene no.5
油彩、アクリル/キャンバス
112x145cm
2006
展覧会カタログ
27x21cm / 14ページ / 図版8点
価格:800円(税込)
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