樹の記憶
2012年
146.5×112.2 cm
木に油彩、金箔

memory of a tree – prayer
2011年
100×240 cm
キャンバスに油彩

下記の要領で眞壁陸二「time after time」展を開催いたします。
1971年金沢生まれ。かつてキャンバスに表現的な作品を中心に描いていたが、木片を支持体として選択して以後、作品は大きな変化と展開を見せ始めた。フラットなキャンバスではなく不定形な上、木切れが持つ不連続さは自由闊達な表現をむしろ阻むものであったろう。
元々木は支持体としては却って古典的なものである。テンペラや宗達の杉戸絵を例に挙げるまでもないが、むしろこの支持体との遭遇は彼の資質を覚醒し、大きな展開を作家に促したことになる。

先ず家の外壁を表現の場として選んだ。
それは風や光、何より背後の風景と絵画が混然と融和し、呼応と同時にせめぎ合う。彼にとって絵画の強度や本質を試問されると共に、明らかな自分の資質を発見する機会であったろう。

2010年、瀬戸内国際芸術祭、男木島の家のプロジェクトは美しい海を背後に鮮やかな油彩、カシューなどを用いて描かれているが、かつての作品と比して直截に
彼の資質が明らかになっている。その後彼の作品は、日本の伝統的な絵画が持つ自然との融和、装飾性、地と図との転換、九谷の釉薬を思わせる色彩、微細さ、ディテールと全体 ―
こうした様々な日本の絵画の遺産と同時に育んできた現代の表現が相対し描かれるようになった。

キャンバスの作品にも、木の節理を持ち込んだ作品や、鳥瞰の視線から描かれた洛中洛外図絵を彷彿とさせる作品(参考図版「memory of a tree – prayer」)など、
現代絵画の可能性を予感させるものである。
微細に描かれた樹木は、遠望すれば霞のようにも見え、点にしか見えぬものが実は人型である、それは迷宮で偶然人が出会うかのような印象を私達に与え、見る者に多くの物語を触発させる。
見え隠れしながら、部分が大きな全体を召還する。微細なのに茫洋とし、彼岸と此岸をわたる。眞壁の作品は緩やかな物語を胚胎しながら豊かな絵画を作り出している。

本展は当画廊での初の個展となる。
ご高覧をお願いするとともに、広くご喧伝を賜りますようお願い申し上げます。

-作家のことば-

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