遠藤良太郎の作品は私達に、絵画が「制度」であることを改めて認識させます。
セザンヌやプッサンなど過去の芸術家の作品を下敷きとしながら、それらの持つ本来の文脈、物語性を切り離した骨格だけが、伝統的画材であるキャンバスにコンピュータで出力されています。
その上には、絵具の筆触が、見方によれば恣意的に見えるほどの描き方で施されており、さらに何かのストーリーの断片を思わせるような台詞調のタイトルが添えられます。

制度として完成を果たしたかに見えるかつての絵画を用いて、その上にあたかも完成に向かうことを拒むかのように筆触を施し攪乱に及ぶ――遠藤の作品は、営々と築き上げられ、疲弊に至った制度としての絵画に深い懐疑を投げかけ、新たな絵画の生成へと向かうものです。

遠藤 良太郎 略歴
展示作品(一部)

スタジオ/二人だけの秘密にしておきたいの/…
90x90cm
アクリル、顔料インクジェットプリント/キャンバス、ベニヤパネル
2002

梅/そうやって、どんどん歳をとっていくのさ/…
75×57.2cm (4点組)
アクリル、顔料インクジェットプリント/キャンバス、ベニヤパネル
2002
展覧会カタログ
21x27cm / 16ページ / 図版11点
東谷隆司による評論「宮廷恋愛 甘美な遊戯」
価格:800円(税込)
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